卒業生の声
1限目の授業より早い授業
本学の経済学部に在籍した4年間、加藤葉子さんは自宅から本学まで片道2時間かけて通い続けた。1限目の授業に間に合うよう毎日早起きするのは大変だが、実は彼女にはもっと早起きしなくてはならない事情があった。何しろ本学の1限目の前に、朝7時から始まる専門学校の授業を受けてくるのだ。そして夕方、本学の講義を聴き終えると再び専門学校に戻って勉強する。学校が閉まると、2時間かけて自宅に戻る。それが彼女の日課だった。
彼女には目標があった。
「大学1年生の前期、公認会計士のセミナーに参加しました。人と関わる仕事で、女性が活躍できて、外から見えない企業の素顔が見られると聞き、私もなりたいと思ったんです」。
彼女は本学の授業と並行して専門学校に通い、公認会計士の国家試験対策の授業を受けていたのだ。
「負けず嫌いな性格で、決めたら最後までやり通さないと気がすまないんです」。
専門学校では、年代も職業もバラバラな多くの“同志”と知り合った。その中に、本学経済学部の先輩もいた。
「その先輩から、公認会計士をめざすなら吉田先生のゼミがいいよと薦められ、3年生から吉田ゼミでお世話になることにしました」。
いつでも帰れる自分の場所
経済学博士である吉田和生教授の専門は、財務会計。
「先生自身も税理士の資格を持っていらっしゃるため、試験前の学生のプレッシャーや緊張をよくご存知です。だから、学生が万全の状態で試験に臨むことができるように気を使ってくださいました」。
だから、吉田先生のゼミには金融系の国家試験をめざす学生が数多く集まる。しかし、先生は学生に甘いのではない。その証拠に「私を誘ってくれた先輩は、吉田先生のゼミは課題が大変だということまでは教えてくれませんでした」と加藤さん。
とはいえ、彼女は吉田ゼミで本当に良かったと思っている。資格試験の勉強だけなら専門学校の授業で事は足りる。実際、ほとんどの受験生はそうしている。しかし、彼女は専門学校では得られないものをゼミに感じていた。
「きちんとした目標と向上心を持ち、刺激しあう仲間がいて、それを少し離れた場所であたたかく見守ってくださる先生がいる。私にとって吉田ゼミは、いつでも帰れる『自分の場所』でした」。
公認会計士の合否は、毎年12月の一次(短答式)試験と、翌年8月の二次(論文式)試験で決まる。一次は1日4科目、二次は3日で5教科6科目をこなさなくてはならない。ゼミ担当の吉田先生によれば「税理士は数年かけて少しずつ合格すれば良いけれど、公認会計士は短期間で全科目に合格する必要がある。それが難しい」と語る。
加藤さんなら、絶対に大丈夫
毎日夜遅くまで勉強した成果が実り、彼女は3年生の12月に一次試験を通過した。しかし4年生の8月、緊張しながら臨んだ二次試験で彼女は不合格となった。
「一緒に頑張ってきた友人は何人も合格したのに。ショックでした」。
こんなに勉強をしてもダメなら、諦めようと思ったこともある。そんな時、吉田先生が声をかけてくれた。
「加藤さんなら、次は絶対に大丈夫です」。
実はその年(2011年)の公認会計士試験の合格者数は1511名で、前年の2041名より500名以上も少なく、合格率も6.5%と過去最低だったのだ。彼女が毎日どれだけ勉強してきたかを間近で見てきた吉田先生は“今年はたまたま運が悪かっただけ。彼女なら必ず合格できる”と確信していた。
その言葉に、折れかけていた彼女の負けず嫌いの心に再び力がみなぎった。
「その日から、今まで以上にがむしゃらに勉強しました」。
朝はこれまでと同じように専門学校で勉強した。ゼミがある日は卒論の準備のために大学に行き、同じ目標に向かって頑張るゼミの仲間たちから元気をもらった。そして授業が終わると再び専門学校にこもって参考書を読みふけった。また一切の就職活動をやめて公認会計士一本に絞り、背水の陣で2回目の2次試験を迎えた。
「その年は、自分でももうこれ以上勉強できないと思うくらい勉強しました。だから試験当日はまったく緊張せずに臨めました」。
そして彼女は、2度目の挑戦で見事に合格した。
就職先は「一緒に働く人の雰囲気が良さそう」という理由で大手の監査法人に決めた。
「これからもっと勉強して、いろんな人と関わり、多くの会社を見るのが楽しみです」と加藤さん。当面、企業のグローバル化を担うために英会話のマスターが急務だという。将来は会計監査を極め、会社の株式公開に携われる実力を身につけていきたい。夢は広がるばかりである。合格はゴールではない。彼女にとって、それは新しいスタートラインなのだ。
プロフィール
加藤葉子さん
有限責任あずさ監査法人
[略歴]
2012年 澳门皇冠_皇冠国际-体育*比分 経済学部 会計ファイナンス学科 卒業
2013年 有限責任あずさ監査法人 入社
2時間かけて名古屋に来て専門学校と本学に通うという生活を4年間続けた加藤さん。そのため、小学校からずっと参加してきた地域の合唱団をやむなく休まざるを得なかった。しかし合格したことで、めでたく活動を再開できた。そして、それを最も喜んでいるのは、4年間、加藤さんの夢がかなうよう応援し続けてくれたご両親に違いない。